拾日記

雑学と教養、物欲と断捨離の狭間を彷徨う

自然資本が人を救う -「里山資本主義」

f:id:ohiroi:20190119211341j:plain

 

 自然との共生

そうしたことを唱える本だと想像していた。

本書のタイトルが、「里山主義」ではなく「里山資本主義」としているのは、

それなりに理由があってのことのようだ。

 

なぜ、〈里山〉〈資本主義〉か?

一つには、マネー資本主義のサブシステムとして補完・共存しているからであり、

もう一つには、まさに里山を資本として、付加価値を生んでいるからである。

マネーの循環こそが至上となるマネー資本主義の世の中。大災害を経験し、われわれに生きていくために本当に必要な水や食料、燃料がマネーでは手に入らないことを痛感する。里山資本主義は、マネーが無い、あるいは循環しない状況下においても、水や食料、燃料といった生活必需品が入り続ける仕組み「安心安全のネットワーク」を備えるものだ。

他方、里山という自然資本を持続可能な形で活用し、マネーを生み出す側面も忘れてはならない。里山資本主義の先進事例として紹介されるオーストリア。林業を先端産業に変貌させ、一人当たりGDPで日本を上回るだけでなく、エネルギー自給率も大幅に改善させた。日本でも、岡山県真庭市はじめ、成功事例が出始めている。

そして、こうした里山資本主義を貫く「人とのつながり」と「自然とのつながり」という二つの「つながり」。マネーの尺度ではなく自己をありのままに他者から承認される、頼れるのはマネーだけという不安に対するセーフティーネットを提供する。これらは、現代人が渇望する二つの欲求とも言える。

第4次産業革命と呼ばれる現代。技術革新により、世界は一層高度なものになっていく。こうした動きを主導するのは、おそらくごくわずかなエリート。利便性という意味でその恩恵を受ける一方、人間的に多くのチャレンジを受けることになるだろう大多数の人々。

その救いの一つに、里山資本主義はなり得るのだろうか。

 

 

なお、「 里山資本主義」(藻谷浩介、NHK広島取材班)は、2014年度の新書大賞を受賞している。

新書大賞の歴代ベスト5:現代の教養・知識を手軽に学べる話題の55冊