拾日記

雑学と教養、物欲と断捨離の狭間を彷徨う

圧巻のグーグル -「Never Lost Again グーグルマップ誕生」

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思えば、最近は出かける時に、ほとんど紙の地図を見たり、持ち歩いたりしていない。もちろん、これはカーナビが普及した時に一度経験したことだが、街に出ても、スマートフォン片手にお店を検索し、ナビに導かれている人を多く見かけるようになった。その立役者がグーグル・マップだ。グーグル・マップは、方向音痴な人々の救世主といった存在を超え、私たちの日常に浸透し、当たり前の存在になっている。もはや「道に迷う」という言葉自体が死語になりつつあると言っても良いかもしれない。

Never Lost Again  グーグルマップ誕生」(ビル・キルディ)は、グーグル・マップの創作メンバーの一人が、その前身となるソフトウェア会社創業の苦闘から、グーグル傘下での開発、その後の発展の軌跡をまとめた一冊。

本書は、創業メンバーの視点から書かれていることもあり、若干美化された印象を受けるものの、内側の人間だからこそ書ける臨場感をもって、読者を惹きつける。中心的なストーリーは10年程度のことだが、その変化はめまぐるしく、技術革新のスピードに圧倒される。副題はグーグル・マップとなっているが、キーホールの後継としては、グーグル・アースの方が近く、より思い入れを感じる。

ストーリーラインは、テキサス大学でのジョン・ハンケとの出会い→キーホールの創業→倒産危機の克服→グーグルによる買収→グーグル・マップ、グーグル・アースのローンチに向けた苦闘→急激な拡張への挑戦→グーグル退社・Niantic創業、といった山あり谷ありのサクセスストーリー。ジョン・ハンケのリーダーシップを軸に、ラリー・ペイジ等創業者とのやりとりや、後にヤフーに転身するマリッサ・メイヤーとの確執、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツらビッグネームの関与、緊迫する国際情勢をはじめ、多くのエピソードを織り交ぜ、その時代を映し出していく。

地図サービスに対する著者らの先見の明にも驚かされるが、それ以上に、ラリー・ペイジらの規格外のスケールに圧倒される。グーグルによるキーホール買収間際のミーティングでの一コマ。

「ラリー、セルゲイ、1000万ドルか1000万ユーザー、どちらを望みますか?」

「君たちは、それよりもっと物事を大きく考えた方がいい」

その後、地図データ獲得のための予算承認、無償化の決定、地図情報の内製化、要所となる会議でも、利益を度外視し、最高のものユーザーに届けることを当たり前のように求めるラリーとセルゲイ。そして、グーグル・マップ、グーグル・アースが、世界10億人の日常にとって欠かすことのできないインフラとなっていくのを目の当たりにし、著者たちは、ラリーたちのビジョンを実感していく。

グーグルは、WEB 2.0時代の覇者と言われ、いわゆるサイバー空間におけるデータを支配するとまで言われている。しかし、あらゆる情報を整理する使命を追求するグーグルにとって、地図データは、フィジカル空間における情報の強固な土台となる。日本企業はモノづくりにおける強みを活かして、フィジカル空間におけるデータ流通で巻き返しを図っており、その帰趨が注目される。